振り返り:劇団綺畸オンラインワークショップ
Aug 14, 2020
先日、私が学生のときに所属していた劇団綺畸からの依頼で、オンラインワークショップを実施した。その振り返りをしておこうと思う。
参加者、アシスタントの方々、事前にメニュー検討に協力してくれた方々のおかげで、いい瞬間が作れた。本当にありがたい。
経緯と総括
7月中旬、ありがたいことに現役生から依頼をいただき、調整・検討して8月上旬に開催した。
ニーズを把握するための会議、メニュー検討、指摘取り込み、アシスタント調整からの本番。
ZOOMでワークショップを受講したことは何度かあるが、ZOOMで開催する側になるのは初めて。
去年のアシスタントのくぼっちから「中野さんが自信あることばかりやったほうがいい。背伸びしないほうがいい」というコメントをもらい、確かにそうだなと思ってメニューを組んだ。オンラインであるため、テクニカルトラブルが生じる可能性もあるし、受講者の状況を細かく把握できないかもしれず、そうなると私が混乱してどうしようもなくなりそうだなと思った。
自分が重視する「舞台上でのリアリティ」を主な検討対象とし、リアリティを実現することによる楽しさを感じてもらおう、と思って計画した。受講者は大学1年生から3年生、6名から7名程度。午前2時間、午後2時間、それを2日間の合計8時間のワーク。中野があれこれ知識を伝えるというよりは、何かをやってもらって相互フィードバックをする、というワークショップ形式。アンケートも記入いただき、おおむね好評だったようだ。
オンラインでやってみて、やれなくはない、と思った。ただ、今回は、劇団のOBというポジションや、アシスタント・受講者の協力、2年生以上は私と何度も面識がある、という好条件が重なってできたと思う。逆に、昨年は1年生とも面識がなくはない、という状態でオフラインでのワークショップだったが、今年の1年生はまったく面識がない。そこでひとつ、場を作れたのはよかったなと思う。
その場にいる人みんな、演劇が楽しくて、楽しもうとしていて、メニューから自分なりの解釈をしていた。私から見ると、それぞれ、確実に何かの経験を得たように見えた(と思いたいだけかもしれないが)。
劇場を使った演劇が非常にやりづらくなった状況で、それでも劇団として活動し、新人も入団して発表会の企画などもやっているそうで、現役の意思というか気合というか、そういうものを感じた。
本当にやれてよかった。現役と関わることができたのは超うれしいし、役にも立ったようだし、大いに自分の勉強にもなった。オンライン環境を無線から有線に切り替えて、Webカメラも新調してよかった。ちょっと高かったが、かなり画質はいい。
メニューと振り返り
テーマは「リアリティ」。よりリアルなシーンを演じることをメインとした。リアリティを生むことを楽しむためのステップとして、「キャラクター」と「場所」を掘り下げられるようなメニューを考えた。
インプロの文脈でいうと、Platform、CROWをしっかり作ることで、不必要にがんばらなくていいようにするイメージ。
→参考:PlatformとTiltを知らない人のために(忍翔)
このメイン→ステップの考え方は、みくゼミのやつをパクった。ようは目的に対してどうするか、という一般的な話にも見えるが、「目的」と「それを実現させるためのワーク(何をもって目的達成とするか)」の両方が最初から頭にあるとメニューが組みやすかった。
→過去ブログ:受講しました:みくゼミ第3期Bクラス5日目(補講)
午前2時間、午後2時間、それを2日間の合計8時間のワーク。2時間を1セッションとし、それぞれの役割を以下のように考えた。
- チェックイン、アイスブレイク(とにかく楽しいと思ってもらう)
- キャラクターを作る(リアリティのためのステップ)
- 場所を作る・伝える(リアリティのためのステップ)
- シーンとチェックアウト
それぞれ、少しずつ詳しく振り返る。
1日目午前:チェックイン、アイスブレイク
メニュー
- 開会
- 講師ポジション、アシスタントポジションの自己紹介
- 受講者自己紹介
- 目的、グランドルール説明、テクニカルチェック
- チェックイン
- それぞれ、演劇の楽しさという点を明文化するようなフォームを提供し、作成。ブレイクアウトルームで受講者相互にフィードバックしてもらった。
- モノローグリレー
- Yes, Let’s(モノローグ風。モノローグリレーで、展開に飽きたらビデオOFFにする)
振り返り
いろんな演劇の講座を受けてみて、ほぼすべてが、ワークショップ形式だったなと思ったし、私もそうしてよかったと思う。自分でアウトプットして、自分で学習ポイントを設定して、それを解決していくほうがモチベーションが高くなると思った。
反面、後にも載せるが「実技時間が短かった」という感想もあったし、アシスタントからも同様の意見があったので、バランス重要だなと思った。説明不足か説明過多だったら、どちらかといえば説明過多だったかもしれない。
コミュニティにおいて、自分の状態をなるべく深いレベルで共有できる文化があるといいなと思っているし、それを体験できるようなものになったと思う。
全員、どういうゲームなのかを把握するのが早く、スムーズにワークに入れたのがありがたかった。
1日目午後:キャラクターを作る
メニュー
- 身上調査書作成(自分について)
- 身上調査書作成(自分をデフォルメしたキャラクターについて)
- 身上調査書について相互フィードバック
- というか「この役だとこういうときどうする?」というホットシーティングに近いもの
- 作ったキャラクターで一人芝居
- お気に入りの場所に、ただ居るというだけの1分
振り返り
身上調査書は、私が先日Web広告の撮影に臨んだときにも利用したもの。
ESSの頃から「キャラクター分析(キャラ分、と呼んでた)」を最初にやれと言われたが、それに尽きるな、と思った。
2日目午前:場所を作る・伝える
メニュー
- 自己紹介(昨日とメンバーが変わっているので)
- 好きなもの9つ紹介、相互シェア
- 風景画を言葉で説明する
- 架空の場所を言葉で説明する
振り返り
ゲールさんの「インプロバイズド宮崎駿」にモロに影響を受けたセッション。
どう説明すれば伝わるのかを試行錯誤する時間となったと思う。シーンをやっていて、いまどこにいるのかが分かれば観客も演者も、ずっとラクになると思う。自分でシーンをやるときは、場所のイメージがあいまいで苦労することがよくある。ここはどこだ、みたいな。
説明する人の感情が見えると、エキサイティングになる。説明しよう、というよりも、自分がどこに感銘を受けたのかをシェアするエネルギーを利用するのがよいな、と感じた。
ウォームアップとして、好きなもの9つ紹介は、CRファクトリーの「コミュニティ・エンパワメント・ラボ」でやったウォームアップをパクった。
強く、あたたかい組織を作ることを延々と考えている団体で、ワークは本当に心地よいものばかり。(自分自身の問いかけが深くて苦労もするのだが、、、)
これは人が集まるところで汎用的に使える、すばらしいワークだと思った。
ZOOMで実施するときは、ブレイクアウトルームを複数回切り替える、というのにどうしても時間がかかるので、改善の余地はあるかなと思った。
みくゼミでは、他人のワークショップメニューをそのままやるのはよくない、という趣旨の教えがあった。自分が信じられないものをやってもよくない、ということだ。しかし、逆に言えば、自分が感銘を受けて、どうやって実現しようか考察をしてから使えるのであれば、パクってもよいと思うし、おそらくこれはみくゼミの教えと反しない。
2日目午後:シーンとチェックアウト
メニュー
- チャットボックス連想
- 2人のシーン(ZOOM接続している、という前提の芝居)
- 2人のシーン(同じ場所に居る、という前提の芝居)
- チェックアウト
振り返り
リアリティを実現し、楽しむという、2日コースの集大成。 興味深いシーンがいくつも生まれたと思うし、見ている人からも興味深い反応が出てきたので、いい場だったと思う。
「シーンに居ることに困った」という発言もあったのでそこは反省点。シーンに安心して存在できるための前提をじゅうぶんに提供できていなかったところがあった。
シーンを予定よりも多くやったのでチェックアウトの時間をじゅうぶんに取れなかったが、チェックアウトとシーン続行を秤にかけ、アシスタントの助言もあってシーン続行とした。結果として、より多くの体験を提供できたとは思う。チェックアウトで言語化・固定化することもとても重要なので、そこは苦渋の決断だったが、決断できてよかった。
参加者からのアンケート結果
掲載許可をいただいた、参加者からの声を掲載します。
「よかったところ」「身についたこと」(自由記述)
- 隠したいと思うようなところが魅力であることが多いと仰っていて、他人のものを聞くと本当にその通りで自分のコンプレックスを肯定的に捉えられました。(H.N様)
- 演技経験がないので、このような演技を学ぶ機会があって本当に良かった。(RO様)
- とにかく楽しかったです。観客にいかに自分の見ている景色をみせるかについてとても勉強になりました。(あさ様)
- 自分を見つめ直し、詳細なキャラクター設定をして演技する力が身に付いたと思う。(H様)
- 自分の演技を考える視点が増えた。人と演劇に取り組む態度を改めて考えるきっかけになった。(音田優輔様)
うれしい声、本当にありがたい。励みになります。
改善点、よくなかったところ
自由記述には特に指摘はなかったのですが、下記の点が挙がりました。
- オンライン接続にトラブルがあった(3件)
- ワーク難易度が低すぎた(1件)
- ワーク難易度が高すぎた(1件)
- 説明が長すぎた(1件)
- 実技が短すぎた(1件)
オンライン接続については、トラブルがあるという前提でメニューを組むということを改めて考えないといけないと感じました。
難易度、説明量、実技量のバランスも見直し、自分のクセも見つめつつ、今後の場づくりに活かします。
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