きみのせい。

Nov 9, 2018

Platform「きみのせい。」 @中目黒ウッディシアター、観てきた。

予想より良かった。エンターテインメントとして品質高いものは用意してくるだろうなと想定していて、それよりも大きなものを見せてもらった感じ。
何度か参加した劇団なので、知り合いが多い。というか全員知り合い。
なので、知り合いバイアスがかかります。

その上で、終演時点で、よい意味で、拍手ができなかった。
賞賛したい、応援したい気持ちよりも先に、いい芝居を観た後に起こる「動けなさ」を体験していた。
知り合いバイアスがかかると、応援のために拍手しようみたいな気持ちにもなるんですが、そういう次元ではなかった。
要は感動した。

Platformは即興という先の読めなさの中で一定のクオリティを出せる劇団だと思っている。しかし、脚本芝居でも波があるように、Platformにも波がある。
その波でいえば、かなりいいレベルだったという話も聞いた。なので、いいとこを観れたんだと思う。
ただ、良かったのは良かったので、いいところ、さらにリクエストしたいところをメモしておく。

感動したのは、即興で「待ち」を使いこなしていたこと。

ベースとして、クロサワインプロやフルレンスの傾向が強いのかなと思った。
また、最近翻訳したDel Closeさんの言葉で、「3つ目に思いついたものは、状況を整理する時間が十分にあるという意味で、最も良いと言える。」というものがあった。要は拙速な反応よりも、しっかり状況把握してからの反応にを重視している。
それらを思い起こさせるほど、今回のPlatformの公演は「じっくり」だった。
沈黙を恐れない。じっくり感じ、そこから真実のリアクションにより近いものを出す。
その場が安全だからこそできる「待ち」。
出演者ですらストーリーが読めない状態であれば、あれこれと状況を付け加えて、時間を埋めていくという心理になりそうなものだが、そうならず、待つ。
で、待ってる間、観客が退屈になっているかというと、そうでもないように思った。
待ちの間のエネルギー量がすごいのである。
何も言わずとも、やらずとも、ドラマが生まれている。
待ちを使いこなすと、安定する。安心する。だから素直な冒険ができる。
すごくいい心理状態が起こっている舞台だった。

その他、細かいところでよかったところ。

司会バニーさんの身体能力。パフォーマンスとしてすごく価値のある動きをしていて、見てて気持ちよかった。
主演ヒカルの身体がかっこええ。ちょっと動いただけで価値を見せてくるのは、毎度ながらさすがだなと思う。
今日最も驚いたのは兄貴。本人は優しくおもしろい青年なのだが、役としては出来のいい弟(主人公)に嫉妬して辛く当たる。その重みが、しっかりと感じられた。「嫉妬して辛く当たる役」ではなくて「嫉妬して辛く当たる」の割合が異様に多くて、凄みがあった。こんな辛い役ができる人だったとは思っていなかった。 また主演ヒカルだが、長時間、共演者のエネルギーにさらされ、自分のエネルギーを使い、それでも失速せずに最後まで質感を保ち続けた。びっくり人間か、と思う。
劇団の先輩役。強烈な怒りの爆発からシーンをスタートさせた。またDel Closeさんの言葉だが「強い感情の観点を持っておけば、シーンで何かを発明する必要はない」という意味のものがあった。感情があれば、よりシーンの難易度は下がる、という主張。ベテランのインプロバイザーであるが、だからこそ、よりやりやすい方法を取れるのだなと思った。
男子がキスを親友の男子から真剣に求められたとき、「ごめん、帰るわ」と言って帰ったのだが、その質感がすばらしかった。台本があってもできることなのかもしれないが、即興だからこそ、本人の葛藤がそのまま舞台に出て、より真実の芝居になっていた。

さらにリクエストしたいところ。(エラそうに。。。何様だ私は。。。)

身体能力。ダンスのシーンがあるが、ムラが目立ったなと思った。身体能力重視の劇団に居たからだし、ダンスをやっていたという自分のバイアスもあるが、身体能力が高い人がいるだけに、ムラが出てしまっていた。身体能力のベースアップを期待したい。
中盤、沈黙の質感が薄くなったところがあった。前には進んでいるのだが、時折足踏みするようなイメージ。自然と情報密度も薄まり、ストーリーの進みも遅くなり、質感がまた薄くなるというサイクルに陥ったところがあった。
ラストは、観客に何かを問いかけているように思った。それ自体は気持ちよかったし、終わり際もかっこよかったのだが、問いかけられていることが今ひとつよくわからず、わかったような気にもなったけれど回答するに十分な材料が見つからなかった、という感じ。ラストに向けて、今まで出てきたものを積み上げて繋げていく、という線が十分に太かったのだろうか、という疑問がある。それは後になって感じたことであって、ラストの瞬間はストーリーの進みに打ちのめされたのが正直なところ。だから動けなかった。

乱筆乱文だが、見たすぐにまとめたかったので今日はここまで。
4000円というお金は大きい。だが、帰りに意見交換した学生が「飲み会を我慢してこれを見たほうがよい」という正直ベースのことを言っていた。完全に同意してしまった。