開催しました:若者自立支援ワーク
Dec 1, 2020
若者自立支援のための組織から依頼され、利用者に対して演劇で遊ぶ場を2回、提供した。
いずれも、参加者が笑い、積極的に発言・意見交換できる場になっているのが素晴らしいという話を職員の方から頂いた。私自身もそう思った。
若者自立支援という活動に対して私がどこまで貢献できるか、と開始前は不安だったが、やってみると奇跡のようなオモロー瞬間がいくつも起こって、ファシリテーターである私が楽しんでしまった(楽しめた方がいいので、もちろんこれは最高なのだが)。
私を紹介いただいた柴田さんからは「中野さん史上最高のワーク」と言ってもらえました。確かに手ごたえはあったので、そう言ってもらえると本当によかったんだなと思う。
1回目振り返り
9月に1回目を開催した。参加者は6名。 テーマは「人間それぞれの、固有の魅力」。 それを特段、印象付けることはしなかったが、テーマを心の中に抱いているだけでファシリテーション・サイドコーチの指針になる。
みんな明るく、建設的で、非常にいい空気感だった。
ワーク設計時、場づくりとしてどんな場にしたいかを上位に考えた。
ここにいてよい、全員の個性を大切に、表現のハードルを下げる、失敗を許容する、、、などなど。一度に深く求めすぎないよう、十分なウォームアップがむしろメインというぐらいの気持ちだった。
メニューをメモしておく。
- 挨拶・導入
- スケールライン
- 名前まわし
- なんでもありしりとり
- 休憩
- 2択ゲーム
- 空間づくり
- 作った空間を使ったショートシーン
- ふりかえり・挨拶
この中でも印象に残ったのは「スケールライン」「なんでもありしりとり」「ショートシーン」だった。
スケールライン
2回実施した。開始時と、休憩後。
休憩後は、開始時と比べて身体・精神のポジティブさが増していることがわかった。参加者同士のかかわり方など、場全体にポジティブさがあったからだと思う。
なんでもありしりとり
途中で、私が指定した手順と違う動きがあった。参加者のひとりから「ルール違反ではないか」という指摘があった。このとき、私が一番試されたと思う。「手順とは異なりますね。でもまあ、今の動きもおもしろいのでこれでやってみましょう」と誘導した。
自分の中では、これでよかったと思っている。もっといい方法があったかもしれないし、同じ一言一句を言っても毎回同じ結果になるとは限らないが。。
ともかく、ひとつ大きな経験ができた。
ショートシーン「北海道旅行」
ショートシーンはすべて爆笑ものだった。まずは一本目。
サークルの同期。男女。卒業旅行として北海道に来た。2人きり。別に付き合ってはないが、仲はとてもいい。お互い、これからどうなるのかと少し気になっている。
北海道のグルメを楽しむ2人。女性の方が北海道に詳しく、いろんなスポットを知っている。しばらく楽しむが、クルーズ船の話が出てきたところで、急にクルーズ船のシーンが見たくなったのでリクエストしてしまった。本来はファシリテーターである私がやるべきことではないのだが、「やらずにはいられない」気分になったのでやってしまった。でもやってよかった。クルーズ船での乾杯、静かな時間、雪の降る景色、最高にロマンチックだった。
ショートシーン「父と娘」
川釣りに来た父と娘。娘は原宿で一人暮らしをしているが、実家の埼玉に里帰りしている。父親はなんとか娘に戻ってほしい。という前提で行った。 しゃべってもいいし、しゃべらなくてもいい。
父親が、どうやら家に居場所がないようだ。母親に靴下を放り出すな、という小言を常に言われている。娘に帰ってきてほしい。でもそれを直接伝えることはできず、「お父さんだってがんばってるんだ・・・!」を連呼することしかできなかった。
無邪気で楽しんでいる娘と、「お父さんだってがんばってるんだ・・・!」しか言えない父。おかしいやら幸せそうやら気の毒やらで、大笑いした。
ショートシーン「居酒屋」
会社の先輩後輩で居酒屋。飲み会は誘われたら行くけど別に自分からは行かない先輩。会社を辞めようと思っている後輩。それに薄々気づいている先輩。
しばらく当たり障りのない会話。後輩が辞めようかなと思っていることを打ち明ける。すると先輩は「会社の金を横領した奴がいる。それを調査しているので、今辞めない方がいい。疑われるから」とアドバイス。急展開。結局それは、後輩を引き止めるための嘘だったのか、本当に横領があったのかはわからないが、結局後輩は仕事を続けることになる。
急展開にびっくりした。シーンに釘付けになるというのはこういうことだと思った。
振り返り
すべて、1分で切ると宣言しておいたが、結局3分以上やった。 プレイヤーがにっちもさっちも行かないぐらいに困っていることはなかったし、観客からは笑いが起きていた。ストーリーとして区切りがつくまでみんなで演じることができた。素晴らしい場だった。
2回目振り返り
11月に2回目実施。 身体について集中した回。
テーマは「失敗を楽しむ」としてみた。参加者は4名。
今回のメニューは次の通り。
- 挨拶
- スケールライン
- 名前回し
- カウント21
- アイアムアツリー
- 身体によるオブジェクトづくり
- オブジェクトから始まるショートシーン
- 振り返り、挨拶
印象的だったのは「名前回し」からの「カウント21」、「アイアムアツリー」、「ショートシーン」だった。
「名前回し」からの「カウント21」
私を含めた5名で名前回しをフォーカス2つでやるのはかなり困難だった。いまひとつ盛り上がりに欠けたので、カウント21に変更した。
最初は「これは無理だろう」という雰囲気だったが、やってみるといきなり15ぐらいまで行って、これはいけると確信。何度かやって21に到達。
「失敗した瞬間に場のエネルギーが上がる」ということを再認識したし、参加者のエネルギーが上がったと思う。
「アイアムアツリー」
発想が素直、豊かだった。びっくりするようなアイデアもあったし、素直につないでいくこともあった。「何をやったらいいか」で戸惑う瞬間もあったが、それも長くはなく、とにかく入って動いていた。
シーン「彼女が殺されている現場に入ってしまった男と、様子を見にきた男の父親」
父親が入った瞬間の、お互いの理解が及ばない感じがとてもよかった。無言で見合っているだけだったが、そこに感情の流れが見て取れた。振り返りでも「自分は殺してないのに、父親に見られた。きっと信じてもらえない」「息子が人を殺すわけがない。しかし信じきれない」という葛藤があったようだ。結局は父親を殴り倒して男が逃走するのだが、もっとも素晴らしかったのは葛藤の瞬間だったと思う。
シーン「トーテムポールが見守る、生きたまま焼かれる老婆と火をつけた娘」
無言のゆっくりしたシーン。日本に住む我々からすると非日常極まりないシーンではあるが、不思議な緊張感がおもしろかった。老婆は「熱い、痛い、なぜ」という断片的で単純で強い感情だったようだ。娘は「もっと燃やしてあげたい」という感情だったようだ。ここは私の解釈だが、早く燃え落ちてほしいという気持ちだったのではないかと思う。燃え落ちる前に観客の2名にはトーテムポール役として入るようお願いした。トーテムポール役は「祖霊としてもあまりいい風習だとは思っていない。また誰かが焼かれたか、という気持ち」と振り返った。
大爆笑して終わった回ではないが、日常の延長ではない体験ができたように思う。
今後に向けて
自立支援センターの芸術祭での1演目について、演出を担当することになった。自分でも挑戦的だと思うが、今までの参加者の様子を見ていると、何かいいものが生まれそうな予感がしている。稽古、当日が楽しみだ。
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